機械式時計にとって磁気は大敵だ。磁気を帯びるとテンプやヒゲゼンマイに影響が出て、歩度が狂う。最悪の場合は修理やオーバーホールが必要になる。最近では耐磁性能を持つ時計も増えてきたが、万能ではない。
特に問題なのは「磁気は目に見えない」という点だ。知らず知らずのうちに時計を磁気だらけの環境に置いてしまい、気づいたら日差が数十秒単位で狂っていた…なんてことは普通にあり得る。だからこそ、撮影に使う機材も含め、磁気の有無を調べることが重要になる。
Switch2の恐怖から始まった

ある日、何気なくテーブルの上にSwitch2と機械式時計を並べて置いてしまった。朝起きると時計が止まっていることが多くなり、調査。結果、ジョイコンを固定するためのマグネットのせいで、止まりやすくなっていたようだ。幸い深刻な故障には至らなかったが、気付くのが遅ければ壊れていた可能性もある。
この経験から「身の回りにどれだけ磁気を持った機材があるのか」を徹底的に調べる必要を感じた。特に俺の場合、時計を撮影する機会も多い。カメラやスマホを時計に近づけるたびに、「この機材は安全なのか?」と不安になる。
磁気を調べる方法は方位磁石

磁気を調べるのに使ったのは、ダイソーで売っているシンプルな方位磁石だ。スマホのコンパス機能は目的が根本から違うから、磁気帯びを見ることは出来ない。アナログの方位磁針を使えば、針の振れ具合で直感的に磁気の強さが分かる。
やり方は簡単。機材を方位磁石に近づけると、針が左右にグッと引っ張られる。振れが強いほど磁気も強い。これを自分の持っている機材すべてに試した。
その結果、時計を安全に撮影できる機材と、絶対に避けるべき機材が明確にわかった。
【安全】EOS RP(デジカメ)は時計の撮影に最適だった。

まず結論から言えば、EOS RPが一番安全だった。もちろん完全に磁気ゼロではないが、針の振れはごくわずかで許容範囲。これなら安心して時計に近づけられる。
時計撮影に関しては、やはりデジタル一眼カメラがベストだと実感した。特に50mm F1.8の単焦点レンズは被写体を引き立てやすく、時計の質感を立体的に写し出せる。その上磁気も安心とは恐れ入った。
【危険】iPhone16の磁気は時計に適さない
実は真っ先に調査したのが普段から使っているiPhone。結果は懸念通り、強烈に磁気を帯びていた。理由はMagSafeだ。充電やアクセサリ装着のために磁石が仕込まれているので、時計を近づけるのは論外。便利さの裏で時計にとっては危険極まりない存在だ。時計用の撮影カメラとして使うことは絶対にできない。使っている人は今すぐやめたほうが良い
【危険】iPhone 4(古いスマホ)は時計の撮影に適さない
「MagSafeがなかった時代のiPhoneなら大丈夫かも」と思って試したのがiPhone 4。しかし残念ながらスピーカー周りに強い磁気が仕込まれていて、針が大きく振れた。最新モデルほど強烈ではないにせよ、時計撮影に使うのは危険。
【危険】GoPro8も磁気を持っていた。

次に試したのはGoPro。こちらは正直意外だった。使えるマグネット機能がないのに、方位磁針はしっかり反応する。針がグリングリンと動き、明らかに磁気を帯びていることがわかる。
これは本当に謎で、MagSafeのようなメリットがあるわけでもないのに、なぜか無駄に磁気を放っている。時計撮影に使うのはリスクが大きい。
ただし時計撮影用に開発されたものではないし万能を謳ってもないので流石に酷かもしれない。彼はあくまでサーフィン用のアクションカメラなのだ
結論:時計撮影はデジカメ一択

今回の検証でハッキリしたのは、スマホやアクションカメラはほぼ例外なく磁気を帯びているということだ。便利ではあるが、時計撮影には不向き。唯一実用に耐えたのはEOS RPをはじめとするデジタル一眼カメラだった。
つまり結論はシンプル。
「時計を安全に撮影したいならデジカメを使うしかない」。
望遠寄りのレンズを組み合わせれば、距離をとって安全に撮影できるうえに、ディテールもくっきり写せる。磁気から時計を守りつつ、美しい写真を残すには必須の選択肢だ。
時計安置環境の磁気調査も忘れるな

撮影機材だけではない。Switch2のようにゲーム機やスピーカーなど、日常の身近な電子機器も強い磁気を帯びている場合が多い。
「撮影用機材の磁気対策」が整っていても、安置場所が磁気だらけでは本末転倒だ。時計を置く棚やテーブルの周囲は、必ず方位磁石で調べておくべきだ。
時計は高価で繊細な機械。知らず知らずのうちに壊すリスクを減らすためにも、磁気チェックを習慣化することを強くおすすめする。
磁気帯びをしてしまっても軽度なら退磁機で抜ける
万が一磁気帯びしていても、軽度であれば退磁機を使えば磁気を抜くことは可能。
最初から磁気帯びをしている時計もあり、先日TEMUで1000円で買った機械式時計は最初から磁気帯びをしていたため、退磁機が役に立った。